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シミュレーション工学


地球における宇宙速度の計算

               AE1-8 小田 悠介
宇宙速度

●
    第1宇宙速度
      ●
          天体に墜落しないで
          周回軌道に乗る(楕円運動)ための速度
●
    第2宇宙速度
      ●
          天体の重力を振り切って
          外宇宙へ行く(双曲線運動)ための速度
●
    地球では・・・


●
    この速度を数値的に求めてみる.
支配方程式

●
    次の条件を仮定すると,単純な2質点の運動で表せる.
      ●
          地球は完全な球である
      ●
          地球の密度は同心球分布である
      ●
          m≪M
●
    このとき,物体の座標pについて
支配方程式の変形

●
    式を使いやすくするために,
    2階微分を1階微分に変形する.


    というベクトルを用いて,
Runge-Kutta法

●
    微分方程式の数値解法
       ●
           現在の値から予測値を用いて次の値を計算
       ●
           割と精度が良い

●
    dx/dt = f(x)のとき,
    4次Runge-Kutta法は
           →→→
宇宙速度の算出

●
    Runge-Kutta法によるシミュレーション結果から二分探索
    によって宇宙速度を算出する.
●
    二分探索で使用する条件・・・
      ●
          第1宇宙速度:
            –   未満: 軌道が地球に食い込む
            –   以上: 物体が半周する
      ●
          第2宇宙速度:
            –   未満: 元の地点に帰ってくる
            –   以上: 無限遠に飛んでゆく
                  ●
                      実際には無限遠の判定が難しいので,
                      地球半径の1000倍まで行ったところで打ち切る.
実験結果(1)

●
    シミュレーション環境・・・MATLAB 7.12.0上で検証
      ●
          定数
               –   万有引力定数         G = 6.674×10-11 m3s-2/kg
               –   地球質量           M = 5.972×1024 kg
               –   地球半径 (赤道半径)    R = 6.378×106 m
      ●
          初期条件
               –   x=0
               –   y = R+1(赤道の1m上空)
               –   vy = 0
      ●   vxを適当な値にして,地球に対して水平に打ち出す.
実験結果(1)

●
    シミュレーションによる物体の軌道
実験結果(2)

●
    二分探索による宇宙速度の算出




        第2宇宙速度         第1宇宙速度
実験結果(2)

●
    最終的に得られた値:
       ●
           第1宇宙速度: 7.9052 ~ 7.9053 [km/s]
              –   解析解: 7.905 [km/s]

       ●
           第2宇宙速度: 11.1755 ~ 11.1770 [km/s]
              –   解析解: 11.18 [km/s]


●
    4桁程度の範囲では,解析解と数値解がよく一致する.
    (もう少し詳しく計算してみると,第2宇宙速度に0.03%程度の定常誤差が出る)

    (探索条件に打ち切りを使っているため?)
まとめ

●
    地球の第1宇宙速度,第2宇宙速度を数値的に求める方法を
    考案,プログラムを組んで実験した.
●
    解析解との比較の結果,4桁程度の範囲でよく一致してい
    た.
●
    第2宇宙速度の探索に問題があるので,よりよい方法を検
    討する必要がある.

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Test

  • 2. 宇宙速度 ● 第1宇宙速度 ● 天体に墜落しないで 周回軌道に乗る(楕円運動)ための速度 ● 第2宇宙速度 ● 天体の重力を振り切って 外宇宙へ行く(双曲線運動)ための速度 ● 地球では・・・ ● この速度を数値的に求めてみる.
  • 3. 支配方程式 ● 次の条件を仮定すると,単純な2質点の運動で表せる. ● 地球は完全な球である ● 地球の密度は同心球分布である ● m≪M ● このとき,物体の座標pについて
  • 4. 支配方程式の変形 ● 式を使いやすくするために, 2階微分を1階微分に変形する. というベクトルを用いて,
  • 5. Runge-Kutta法 ● 微分方程式の数値解法 ● 現在の値から予測値を用いて次の値を計算 ● 割と精度が良い ● dx/dt = f(x)のとき, 4次Runge-Kutta法は        →→→
  • 6. 宇宙速度の算出 ● Runge-Kutta法によるシミュレーション結果から二分探索 によって宇宙速度を算出する. ● 二分探索で使用する条件・・・ ● 第1宇宙速度: – 未満: 軌道が地球に食い込む – 以上: 物体が半周する ● 第2宇宙速度: – 未満: 元の地点に帰ってくる – 以上: 無限遠に飛んでゆく ● 実際には無限遠の判定が難しいので, 地球半径の1000倍まで行ったところで打ち切る.
  • 7. 実験結果(1) ● シミュレーション環境・・・MATLAB 7.12.0上で検証 ● 定数 – 万有引力定数 G = 6.674×10-11 m3s-2/kg – 地球質量 M = 5.972×1024 kg – 地球半径 (赤道半径) R = 6.378×106 m ● 初期条件 – x=0 – y = R+1(赤道の1m上空) – vy = 0 ● vxを適当な値にして,地球に対して水平に打ち出す.
  • 8. 実験結果(1) ● シミュレーションによる物体の軌道
  • 9. 実験結果(2) ● 二分探索による宇宙速度の算出 第2宇宙速度 第1宇宙速度
  • 10. 実験結果(2) ● 最終的に得られた値: ● 第1宇宙速度: 7.9052 ~ 7.9053 [km/s] – 解析解: 7.905 [km/s] ● 第2宇宙速度: 11.1755 ~ 11.1770 [km/s] – 解析解: 11.18 [km/s] ● 4桁程度の範囲では,解析解と数値解がよく一致する. (もう少し詳しく計算してみると,第2宇宙速度に0.03%程度の定常誤差が出る) (探索条件に打ち切りを使っているため?)
  • 11. まとめ ● 地球の第1宇宙速度,第2宇宙速度を数値的に求める方法を 考案,プログラムを組んで実験した. ● 解析解との比較の結果,4桁程度の範囲でよく一致してい た. ● 第2宇宙速度の探索に問題があるので,よりよい方法を検 討する必要がある.