JPAA 価値評価センター 評価人研修 2014年2月28日 企業における知財評価
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企業における知的財産の価値評価 主に会計目的の価値評価であるPPA (Purchase Price Allocation) を中心に評価手続き等を説明
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JPAA 価値評価センター 評価人研修 2014年2月28日 企業における知財評価
- 1. 企業における知的財産価値評価 IPValuation 特許事務所 弁理士 松本 浩一郎 2014年2月28日 日本弁理士会 知的財産価値評価推進センター 評価人候補者研修
- 2. 1. はじめに 2014/2/28 IP Valuation Patent Office
- 3. 無形資産の重要性が増大 2014/2/28 IP Valuation Patent Office3
- 4. 相次ぐM&A – 今月の事例 買い手 対象会社等 取引金額 総額190億ドル（約1兆9400億円） （現金40億ドル、FB株式120億ドル、 RSU30億ドル 9億ドル（約920億円） 米国の半導体加工会社 モレ キュラープリント 非公表 9億5千万円 2014/2/28 IP Valuation Patent Office →顧客基盤、製造技術、ブランドなどの無形資産がターゲット 4
- 5. 相次ぐM&A – 1月の事例 買い手 対象会社等 取引金額 サントリー ビーム 1兆6,500億円 ABインベブ OBビール（韓国） 6,000億円 レノボ Google傘下のモトローラ・モビリティのスマート フォン事業 2,970億円 レノボ IBMのPCサーバー事業 2,400億円 ベライゾン インテルのネットテレビ部門 210億円程度 リンガーハット ハチバン（８番らーめん） 50億円程度 ホットランド （築地銀だこ） コールドストーン日本法人 10億円前後 双日 東南アジアでの「アドミラル」商標権 非公表 電通 ポーランドとオーストラリアで広告会社買収 非公表 日本テレビ タツノコプロ（タカラトミーの子会社） 数億円 2014/2/28 IP Valuation Patent Office →ブランド、コンテンツ、顧客基盤などの無形資産がターゲット 5
- 6. 順 位 会社名 時価総額（億 円） 40 伊藤忠商事 20,413 41 オリックス 20,245 42 三井住友トラスト・ホールディングス 19,478 43 楽天 19,368 44 国際石油開発帝石 19,156 45 東芝 18,687 46 ソニー 18,342 47 クボタ 18,105 48 任天堂 17,821 FBの時価総額は楽天の9倍以上 2014/2/28 IP Valuation Patent Office6 （出所）Yahoo!ファイナンス：最終更新2014年2月21日20時40分 Facebook の時価総額は、2014/2/21現在で1,748億ドル（約17兆8,500億円）
- 7. 2．知財目的のM&A 2014/2/28 IP Valuation Patent Office
- 8. 過去の知財目的のM&A (1) 年月 買い手 対象会社等 取引金額 2008年4月 武田薬品 ミレニアム・ファーマシューティカ ルズ 8,800億円 2008年6月 第一三共 ランバクシー・ラボラトリーズ（イ ンド） 4,900億円 2008年11月 パナソニック 三洋電機の普通株式50.2％ 4,038億円 2010年3月 アステラス製薬 OSIファーマシューティカルズ 3,700億円 2010年4月 HP パーム（Palm、WebOS等） 12億ドル 2011年5月 武田薬品 ナイコメッド（スイス） 96億ユーロ （1兆1000億円） 2014/2/28 IP Valuation Patent Office8 その後、 • HPは特許をQualcommに売却 • パナソニックは買収関連の特許・のれんを大幅に減損、 • ランバクシーはインド工場の製品についてFDAから米国への輸入禁輸措置
- 9. 過去の知財目的のM&A (2) 年月 買い手 対象会社等 取引金額 2011年7月 Sony, Apple, Microsoft等6社の コンソーシアム 破綻会社NORTELの特許ポートフォ リオ6,000件 45億ドル 2011年7月 Google IBMが保有する広範な特許1,000件 非公表 2011年8月 Google Motorola Mobilityの買収 125億ドル 2012年3月 Facebook IBMが保有するネットワーク関連の 特許750件 非公表 2012年4月 Microsoft AOLが保有するインターネット関連 特許925件 1,056百万ドル 2012年4月 Facebook MicrosoftがAOLから取得した特許の 一部650件 550百万ドル 2012年6月 インテル InterDigitalが保有する3G/LTE関連特 許1,700件 375百万ドル 2014/2/28 IP Valuation Patent Office9 その後 • Googleは（特許を残して）MotorolaをLenovoに売却
- 10. 過去の知財目的のM&A (3) 年月 買い手 対象会社等 取引金額 2012年7月 Universal Display Corp 富士フイルムが保有する有機EL関連 特許1,200件 105百万ドル 2012年8月 Vringo Nokiaが保有する特許500件 22百万ドル 2012年11月 ARM MIPS Technologiesが保有するネッ トワーク関連特許580件 350百万ドル 2013年1月 Apple, Google 破綻したKodakの特許1,100件 527百万ドル 2013年2月 LG HPが保有するWebOS関連ソフト ウェア、ライセンスおよび人材 非公表 2013年3月 HTC ADC Telecomが保有する4G通信に 関する特許82件 75百万ドル 2013年4月 船井電機 Lexmarkが保有するインクジェット プリンター関連特許1,651件 73.5百万ドル 2014/2/28 IP Valuation Patent Office10
- 11. 過去の知財目的のM&A (4) 年月 買い手 対象会社等 取引金額 2013年9月 Microsoft Nokiaの携帯電話事業および特許 総額54億4千万 ユーロ（約7,140 億円） （携帯電話事業： 37億9千万ユーロ、 特許ライセンス： 16億5千万ユーロ） 2014年1月 Qualcomm HPが保有するPalm、iPaq等関連特 許2,400件 非公表 2014年1月 Lenovo Motorola Mobility の Smartphone事 業 29.1億ドル 2014年1月 Twitter IBMが保有する特許900件 非公表 2014/2/28 IP Valuation Patent Office11
- 12. 取引価格の動向 2014/2/28 IP Valuation Patent Office 米国の特許取引アドバイザリー会社 IPOffringsによると、2012年の特許1件あ たりの取引価格は平均値で約37万ドル、 中央値で22万ドル 同じく、2013年の取引価格の平均値は約 23万ドル、中央値は17万ドル 2011年から2012年にかけての、インター ネット・無線通信・携帯情報端末関連の特 許獲得競争が一段落したことから、特許取 引価格は下落傾向 12
- 13. 高額取引の背景 2014/2/28 IP Valuation Patent Office 右の図は、2011年夏頃の各社間で 争われている裁判の状況を示した もの このような状況下で、裁判目的で Apple、Google、Microsoftといっ た大企業が特許買収を進めたため、 2011年以降、特許が高騰 米国において特許の価値が高いの は、裁判費用にも要因 13
- 14. 3．事業会社による特許売却 IP Valuation Patent Office2014/2/28
- 15. エリクソンによる特許の資金化 2013年1月、エリクソンはUnwired Planetへの特許譲渡を発表 特許保有SPV 特許260件 特許2,185件 さらに2014年から５年間、 毎年100件ずつ追加 対価はライセンス料から受 領 累積収益 Ericsson Unwired Planet 1億ドルまで 20% 80% 1億ドル超 5億ドルまで 50% 50% 5億ドル超 70% 30% SPVの収益配分 支配権 • ロイヤルティ獲得が主要業務 （必要に応じて訴訟も） • 16億ドルの繰越欠損金の有効活 用 2014/2/28 IP Valuation Patent Office （特許ライセンス会社） 15
- 16. パナソニックの取り組み 2014/2/28 IP Valuation Patent Office16
- 17. 具体的な特許売却案件 報道年月 対象特許等 売却先 取引金額 2013年12月 CMOS ス用途向け半導体等複数の技 術分野を網羅する、合計900 件以上の特許ポートフォリオ Wi-LAN社 (NASDAQ:WILN)の 子会社 Collabo Innovations Inc. 非公表 2014年1月 3G通信および4G通信の基幹 技術に関する約500件の特許 ポートフォリオ Inventergy社 (NASDAQ: EONC) 非公表 2014年1月 DSL（デジタル加入者線）の ハンドシェーク手順に関する 技術標準G.994.1の必須特許 Sisvel社 非公表 2014/2/28 IP Valuation Patent Office17
- 18. Wi-LANとは Wi-LAN Inc. (Canada) Nasdaqおよびトロント証券取引所に上場 4千件以上の特許を保有 主に無線通信に関する技術についてライセンスを供与して 収益を獲得 他社から特許を買い取ることによって、保有する特許ポー トフォリオを拡大 主なライセンシー 2014/2/28 IP Valuation Patent Office18
- 19. Inventergyとは Inventergy Inc. HPの特許担当役員だったJoe Beyersが 設立した特許取得／ライセンス会社 2013年12月にeOn Communications (NASDAQ: EONC)と逆さ合 併して上場会社Inventergy Global Inc.となることを発表 主として、大企業から優良な特許ポートフォリオを取得し、適切 にライセンス料を獲得するモデルであり、パテント・トロールと は一線を画すと主張 2014/2/28 IP Valuation Patent Office19
- 20. SISVELとは SISVEL International S.A. イタリアに本社がある知的財産権の 管理会社 特許権者からの委託を受けて、以下の様な規格のパテントプール（ライセ ンス・プログラム）を運営している MPEG Audio DVB-T, DVB-T2 H.264 SVC LTE Wi-Fi 2014/2/28 IP Valuation Patent Office20
- 21. 2014/2/28 IP Valuation Patent Office ! www.wilan.com © copyright Wi-LAN 2013 1 ! PRESS RELEASE Wi-LAN 21
- 22. 2014/2/28 IP Valuation Patent Office Inventergy Inc. QuadruplesTelecommunications Patent Portfolio, Acquiring 500 Patent Assets From Panasonic Inventergy Inc. January 6, 2014 8:55 AM CUPERTINO, CA--(Marketwired - Jan 6, 2014) - Inventergy Inc. (NASDAQ: EONC) has announced today that it has acquired approximately 500 patent assets from Panasonic Corporation (a Fortune 100 global electronics company). The portfolio covers key technologies in 3G and 4G communications, a field where Panasonic has been an early technology innovator. This transaction marks Inventergy‘s second significant patent portfolio acquisition in the telecommunications space in approximately six months, and increases the company’s portfolio to more than 660 patents. The portfolio, among other things, applies broadly to radio access network communications technologies and spans a number of key market segments including telecommunications operators, base station equipment vendors, and end-user equipment vendors. Inventergy has currently identified more than 100 companies within these primary licensee market segments that could benefit from a license to these important mobile broadband intellectual property assets. 22
- 23. 2014/2/28 IP Valuation Patent Office SisvelTo Launch New License Program Based On DSL Standard Essential Patents From Panasonic LASVEGAS, Jan. 9, 2014 /PRNewswire/ -- Sisvel International S.A. ("Sisvel") announced today the launch of a new licensing program for patents acquired from Panasonic System Networks Co., Ltd., a division of Panasonic Corporation, and which are essential to DSL technology standards; specifically the G.994.1 standard, which relates to handshake procedures for digital subscriber line (DSL) transceivers. "In Sisvel's view, this patent portfolio reflects the most significant contribution to the development of the G.994.1 standard and we thank Panasonic System Networks Co., Ltd. for the opportunity to ensure that its work within this space is properly recognized," said Mr. Sandro Spina, Licensing Director of the Sisvel Group. Licenses under these patents will be offered on reasonable, and non- discriminatory, or RAND, conditions. Information about the terms and conditions of such licenses will soon be available from Sisvel upon request by companies requiring a license. Interested parties should contact Sisvel by sending a message to DSL-manager@sisvelus.com. 23
- 24. 4. 会計目的の特許価値評価 IP Valuation Patent Office2014/2/28
- 25. 会計目的の価値評価とは 国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準では、企業結合 取引の実行後に、買収対価を取得した資産・負債に配分 する手続き(Purchase Price Allocation)が必要 日本の会計基準においても、文言上は同様の手続きが定め られている 取得した資産・負債はすべて公正価値(fair value)で再評 価 取得時の貸借対照表に載っていない資産・負債であって も、認識すべきものがあれば識別・評価する 特に、無形資産の識別・評価がPPA業務の中心 2014/2/28 IP Valuation Patent Office25
- 26. PPAのイメージ 取得時の帳簿価額 公正価値評価 2014/2/28 IP Valuation Patent Office26 流動 資産 固定 資産 負債 取得 価額 流動 資産 固定 資産 負債 取得 価額 無形 資産 のれん 全ての資産・ 負債を公正価 値で評価
- 27. PPAを実施する目的 企業によるM&Aが増加しており、企業結合に関する情報 の重要性が高まっている 特に企業が何を目的としてM&Aを行い、今後どのような 経営戦略に基づいて事業運営を行っていくのかを判断す る情報が求められている 何を買ったのか（顧客基盤、ブランド、技術、等） いくらで買ったのか 想定した利益が得られているか（減損の必要はないか） 2014/2/28 IP Valuation Patent Office27
- 28. のれんの意味 識別された無形資産は、現存する事業基盤（技術、ブラ ンド、顧客基盤など）の価値を示している これに対して、残額であるのれんは、現時点では明確に 識別できない将来性を意味していると考えられる 将来獲得する顧客からの収益 将来開発する技術からの収益 将来実現するシナジー 取得価額に占めるのれんの割合が高いということは、将 来性に賭けた投資をしていることになる 2014/2/28 IP Valuation Patent Office28
- 29. IFRS/米国会計基準における無形資産の例示 種類 項目 マーケティン グ関連 商標、商号、サービスマーク、新聞題字、インターネッ トドメイン名 顧客関連 顧客リスト、顧客との関係、受注残 芸術関連 演劇、オペラ、バレエ、書籍、雑誌、新聞、音楽（作曲、 作詞）、絵画、写真、映画、テレビ番組 契約関連 ライセンス、ロイヤルティ、広告契約、賃貸借契約、建 築許可、フランチャイズ契約、営業権、放送権、利用権 技術関連 特許権、ソフトウェア、企業秘密（製法など） 2014/2/28 IP Valuation Patent Office29 取得した企業が上記の資産を持っている可能性がある場合には、その資 産の認識・測定を検討する必要がある。
- 30. IFRS/米国会計基準における無形資産の定義 定義 物理的実体のない識別可能な非貨幣性資産 過去の事象の結果として、企業が支配 将来の経済的便益が企業に流入する期待 認識基準 当該資産に起因する、期待される将来の経済的便 益が企業に流入する可能性が高い 当該資産の取得原価を信頼性をもって測定できる 2014/2/28 IP Valuation Patent Office30
- 31. IFRS適用会社（2014年2月現在） 会社名 初度適用時 日本電波工業 2010/3期 HOYA 2011/3期 住友商事 2011/3期 日本板硝子 2012/3期1Q 日本たばこ産業 2012/3期 ディー・エヌ・エー 2013/3期1Q アンリツ 2013/3期1Q SBIホールディングス 2013/3期1Q 会社名 初度適用時 マネックスグループ 2013/3期 双日 2013/3期 丸紅 2013/3期 トーセイ 2013/11期1Q 中外製薬 2013/12期1Q 楽天 2013/12期1Q ネクソン 2013/12期1Q ソフトバンク 2014/3期1Q 旭硝子 2013/12期 2014/2/28 IP Valuation Patent Office31
- 32. IFRS適用予定会社（2014年2月現在） 会社名 導入予定時期 アステラス製薬 2014/3期 武田薬品工業 2014/3期 小野薬品工業 2014/3期 第一三共 2014/3期 リコー 2014/3期 伊藤忠商事 2014/3期 三井物産 2014/3期 三菱商事 2014/3期 会社名 導入予定時期 ヤフー 2015/3期1Q 参天製薬 2015/3期 LIXILグループ 2016/3期 2014/2/28 IP Valuation Patent Office32
- 33. 5．無形資産の評価手続 2014/2/28 IP Valuation Patent Office
- 34. PPAにおける評価手続き 1. 配分すべき金額の算定 2. 評価基準日におけるB/Sの入手 3. 無形資産以外の資産および負債の公正価値評価 4. 無形資産の識別 5. 無形資産の測定 2014/2/28 IP Valuation Patent Office34
- 35. 配分金額の算定 配分すべき金額は、取得した対象会社の株式の価値と対 象会社の有利子負債（公正価値）の金額の合計 取得した株式が100％未満の場合には、100％ベースに換算 取得に直接要した費用は、米国会計基準およびIFRSでは取 得原価に含めず費用処理（現行日本基準では取得原価に含 めるが、昨年9月に公表された改正企業結合会計基準では、 含めない。2015年4月１日より適用） 取得に直接要した費用とは、企業が外部のアドバイザーに支 払ったDD費用、バリュエーション費用、コンサルティング費 用、弁護士費用等の報酬・手数料等 2014/2/28 IP Valuation Patent Office35
- 36. 無形資産以外の公正価値評価 入手した評価基準日時点における、有利子負債以外の負 債、流動資産および有形固定資産について、公正価値評 価を実施 運転資本や有形固定資産の公正価値評価額は、無形資産 評価において超過収益法を用いる際に必要となる このため、無形資産評価に先立って、無形資産以外の公 正価値評価が行われる 2014/2/28 IP Valuation Patent Office36
- 37. 無形資産の識別 以下のいずれかの要件を満たすものを認識 1. 契約または法律上の権利によって生じるもの（契約・法 的要件） 2. 分離・分割が可能で、売却、譲渡、ライセンスの付与、 貸与または交換が可能な資産（意志の有無は不問） 具体的には、買収先選定の検討資料、買収交渉の内容、 買い手やターゲット会社へのインタビューなどによっ て、取得の目的、ターゲットの有する強み、固有の特 徴などから把握 2014/2/28 IP Valuation Patent Office37
- 38. 無形資産の測定 識別された無形資産のそれぞれについて、必要な資料を 入手し、適切な評価手法を用いて、無形資産の公正価値 を評価する 作業に必要な資料については、直接的なものがない場合 ば多い（例えば、契約の更新率や顧客の継続期間、技術 が陳腐化するまでの期間、等）ので、代替となる資料も 含めて検討 2014/2/28 IP Valuation Patent Office38
- 39. 6．無形資産の評価手法 2014/2/28 IP Valuation Patent Office
- 41. ロイヤルティ免除法：料率データ ロイヤルティ免除法に用いるロイヤルティ料率は、以 下の資料を参考に検討 対象会社における過去のライセンス契約実績データ （入手可能な場合）同業他社におけるライセンス実績 データ ロイヤルティ料率データハンドブック（経済産業調査 会） 実施料率（第５版）（発明協会） ※やや古い royaltystat database (www.royaltystat.com) RoyaltySource database (www.royaltysource.com) 2014/2/28 IP Valuation Patent Office41
- 42. 2014/2/28 ロイヤルティ免除法（計算例） Year 1 Year 2 Year 3 Year 4 Year 5 ロイヤルティ対象売上 10,000 8,500 6,500 3,250 1,000 ロイヤルティ料率 5% 5% 5% 5% 5% ロイヤルティ免除額 500 425 325 163 50 法人税率 40% 法人税等 (200) (170) (130) (65) (20) 税引後ロイヤルティ免除額 300 255 195 98 30 割引率 10% 割引期間 0.50 1.50 2.50 3.50 4.50 現在価値へのディスカウント･ファク ター 0.95 0.87 0.79 0.72 0.65 ロイヤルティ免除額現在価値 286 221 154 70 20 現在価値合計 750 償却に係る税効果額 263 0.35 評価額 1,013 IP Valuation Patent Office42
- 43. 2014/2/28 超過収益法 キャピタル・アセット・チャージは、評価対象の無形資産がキャッ シュ・フローを創出するために、他の資産の経済的便益を享受するこ との対価として支払う賃借料と考えられる キャピタル・アセット・チャージ 運転資本 評価対象以外の無形資産 有形固定資産 + 超過収益法は事業全体のキャッシュ・ フローから無形資産に帰属する部分だ けを抽出して、資本還元する方法 + 無形資産に帰属するキャッシュ・フ ローは、事業全体のキャッシュ・フ ローから運転資本、有形固定資産、評 価対象以外の無形資産に要求される キャピタルアセットチャージを差し引 いた残余キャッシュ・フローとして計 算 労働力の集合体 IP Valuation Patent Office43
- 44. 2014/2/28 超過収益法（計算例） Year 1 Year 2 Year 3 Year 4 Year 5 特許権に関連する事業による収益 10,000 8,500 6,500 3,250 1,000 特許権に関連する事業にかかる費用 (7,000) (5,950) (4,550) (2,275) (700) 利益 3,000 2,550 1,950 975 300 加算：償却費 500 425 325 163 50 キャピタル・アセット・チャージ （CAC） 売上高比 減算：CAC運転資本 1.0% (100) (85) (65) (33) (10) 減算：CAC建物・機械装置等 3.0% (300) (255) (195) (98) (30) 減算：CAC土地 1.0% (100) (85) (65) (33) (10) 減算：CAC労働力の集合体 4.0% (400) (340) (260) (130) (40) 税引前利益 2,600 2,210 1,690 845 260 法人税率 40% 法人税等 (1,040) (884) (676) (338) (104) 税引後利益 1,560 1,326 1,014 507 156 割引率 15% 割引期間 0.50 1.50 2.50 3.50 4.50 現在価値へのディスカウント･ファク ター 0.93 0.81 0.71 0.61 0.53 超過収益現在価値 1,455 1,075 715 311 83 現在価値合計 3,639 償却に係る税効果額 1,456 0.40 評価額 5,095 IP Valuation Patent Office44
- 45. WACCとWARA 運転資本 顧客関係 有利子負債 (Debt) 株式 (Equity) 事業用資産 調達資金 WARA (Weighted Average Return on Assets) 2014/2/28 IP Valuation Patent Office WACC (Weighted Average Cost of Capital) 建物 土地 商標権 のれん 特許権 45
- 46. 7．識別と評価の事例 IP Valuation Patent Office2014/2/28
- 47. 今回取り上げる事例 ある機械部品製造会社を買収したケース 識別を検討した無形資産 商標の使用権 顧客関係 技術（特許及びノウハウ） 労働力の集合体 その他（有利／不利な契約、受注残、競業避止契約、等） 2014/2/28 IP Valuation Patent Office47
- 48. 商標の使用権 概要 商標は自他識別のために製品に付される文字や記号、シン ボルであり、登録により保護される 本件では、SPA（株式売買契約）により5年間の使用権が 付与されている 認識 商標の使用権は契約に基づく権利であるため、契約・法的 要件を満たす 2014/2/28 IP Valuation Patent Office48
- 49. 技術（特許およびノウハウ） 概要 特許は、特許要件を満たした技術的思想に対して独占権を 与えるものである また、ノウハウは事業上有益で、一般に知られておらず、 秘密に管理されているものである 認識 特許及びノウハウは法的に保護される権利であるため、契 約・法的要件を満たす ただし、本件ではインタビューの結果、既に業界において 同等・類似の技術・ノウハウが利用されている実態がある ため、重要性がないものとして、認識しないこととされた 2014/2/28 IP Valuation Patent Office49
- 50. 顧客関係 概要 対象会社は複数の完成車メーカーとの間で部品供給契約を 締結しているほか、営業部門社員が顧客と自社技術部門と の関係維持に貢献している 現行モデルに対する部品供給に加えて、新型についても部 品供給契約を締結できる可能性もある 認識 このような顧客との関係性は、契約・法的要件を満たすた め、無形資産として認識する必要がある 2014/2/28 IP Valuation Patent Office50
- 51. 労働力の集合体 概要 労働力の集合体(AssembledWorkforce)は、将来キャッ シュ・フローを生み出すために重要な資源である 買い手は、一定の労働力を組織するコストを節約できる 認識 労働力の集合体は、最終的にのれんに含めて計上されるた め、直接的には認識・測定の必要はない ただし、前述の「顧客関係」を超過収益法で算定する際に、 労働力の使用コストをキャピタルチャージとして考慮する 必要があるため、認識・測定を要する 2014/2/28 IP Valuation Patent Office51
- 52. その他の無形資産 概要 有利／不利な契約、受注残、競業避止義務などで、重要な ものがあれば、無形資産として認識する必要がある 認識 上記のような契約等はいずれも契約・法的要件を満たす 本件では、インタビューの結果、これらに該当する契約等 は存在しないか、あっても重要性に乏しいということで あった 2014/2/28 IP Valuation Patent Office52
- 53. 無形資産の測定 無形資産の識別の結果、測定を要する無形資産は以下の とおりとなった 商標の使用権 顧客関係 労働力の集合体（顧客関係の算定に使用） 測定方法 商標の使用権については、ロイヤルティ免除法を採用 顧客関係については、超過収益法を採用 労働力の集合体については、コスト・アプローチ（再構築 費用）を採用 2014/2/28 IP Valuation Patent Office53
- 54. 商標の使用権 評価方法 商標使用権の評価方法として、最も一般的なロイヤルティ 免除法を採用 主な前提条件 存続期間については、SPAにおいて定められた5年間 計画期間後の売上高伸び率は1％ ロイヤルティ料率については、対象会社へのヒアリング等 を参考に決定 割引率はWACCに2％のリスクプレミアムを加算 節税効果の計算に用いる償却期間は税法に基づき5年 2014/2/28 IP Valuation Patent Office54
- 55. 使用権の計算例 2014/2/28 IP Valuation Patent Office55
- 56. 償却による節税効果の計算例 2014/2/28 IP Valuation Patent Office56
- 57. 取得価額の配分結果 2014/2/28 IP Valuation Patent Office57
- 58. WARA分析 2014/2/28 IP Valuation Patent Office58
- 59. 8．最近のトピックス 2014/2/28 IP Valuation Patent Office
- 60. 知財を巡る国際機関や国の動き OECD 課税回避防止に向けた行動計画「税源侵食と利益移転(BEPS; Base Erosion and Profit Shifting)」を発表（2013/7/19） TPP交渉 目標の年内妥結はできず、今月22日からシンガポールで閣僚交渉 知的財産権分野では米国と新興国が対立 産業革新機構（INCJ） ベンチャー企業への積極的な投資 ベンチャーファンドへの積極的な投資 2013年7月に知財ファンド創設 パテントボックス税制 欧州大陸諸国に続いて英国も2013年4月から導入 日本では経団連が税制改正で要望 2014/2/28 IP Valuation Patent Office60
- 61. OECD: BEPS行動計画 Apple, Google, Starbucksなどが採用しているグロー バル節税策に対する批判の高まり Apple CEOのTim Cook氏は、課税回避の疑いに ついて米上院の公聴会で証言 スターバックス英国法人は、「法の求めを超え て」「利益に関係なく」今後２年間１千万ポンド の法人税を支払い オランダ、スイス、アイルランド、ルクセンブルク といった税率の低い国に所得を移転して課税を回避 行動計画では、無形資産に関して、グループ内で低 課税国に移転する際の価格の算定方法について、国 際基準を策定することを検討 無形資産の広範かつ明瞭な定義 価値評価が困難な無形資産に関するルール策定 2014/2/28 IP Valuation Patent Office61
- 62. INCJの最近のベンチャー投資案件 発表年月日 投資先 事業内容 投資金額 2013/10/7 スマートインサイト （株） ビッグデータ分析ソフト ウェアの開発・販売 10億円 2013/10/15 （株）ロイヤルゲート 決済プラットフォームの開 発・運営 10億円 2013/10/28 コイニー（株） スマートフォンを用いた決 済ビジネス 8億円 2014/1/14 リファインバース （株） 使用済みタイルカーペット の再資源化 5億円 2014/2/3 NapaJen Pharma DDS技術を用いた医薬品開 発 9百万ドル 2014/2/12 スキューズ（株） 産業用ロボット 5億円 2014/2/20 （株）ニュー モーションコミック 9億円 2014/2/28 IP Valuation Patent Office62
- 63. INCJの最近のファンド出資案件 発表年月日 投資先 事業内容 投資金額 2013/10/16 UTEC3号投資事業有 限責任組合 アカデミア発シーズの インキュベーション 100億円 2013/11/8 MPI-1号投資事業有限 責任組合 医療機器インキュベー ションファンド 60億円 2013/11/22 グローバル・ブレイン 5号投資事業組合 ハンズオンCVC 100億円 2014/1/8 WiL Fund ベンチャー投資育成 ファンド 100百万ドル 2014/2/28 IP Valuation Patent Office63
- 64. 産業革新機構：知財ファンド 2014/2/28 IP Valuation Patent Office 新規設立の株式会社 社長 吉井重治氏 （元日本コカコーラ副社 長、元三洋電機常務） 従業員10名 （9千万円） （27.5億円） 三井物産、 パナソニック （2.5億円） パナソニック 等電機会社 大手電機会社から未利用特許を買い取り （技術流出防止） 買い取った特許を中小・ベンチャーへラ イセンス ライセンス先へ技術者をコンサルタント として派遣（技術者の海外流出防止） 64
- 65. 英国のパテントボックス税制 利益 非特許関連 特許関連 通常得られる (routine)利益 左記以外 ブランドに帰 属する利益 左記以外 特許関連とは 特許実施品による利益 ライセンス収入 他社からの損害賠償金 ルーティン利益とは 特許がなくても得られるであ ろう利益 研究開発費等を除く事業費用 の10％ ブランドに帰属する利益とは 想定ロイヤルティ 2014/2/28 IP Valuation Patent Office65
- 66. 経団連ー税制改正要望 平成26年度税制改正要望で、前年度に引き続き「パテン トボックスの導入」を要望 知的財産を国内に保有、活用するインセンティブが不足 欧州諸国では、知財に起因する所得について税制メリット を与えるパテントボックス税制が普及 2013年4月からイギリスでパテントボックス税制が導入 既にGSKがイギリスに新工場建設、2億ポンドの投資を決定 FIAT/Chryslerも本社機能はイギリスへ 日本企業の研究開発拠点や無形資産が、パテントボックス 導入国へ移転する懸念 2014/2/28 IP Valuation Patent Office66