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86akademeia Olympus Incident
- 2. 目次
1. はじめに
2. オリンパス事件とは
3. 事件の全体像
4. 事件の過程
5. 事件が提起した日本の問題
6. 終わりに
2 2012/6/12
- 3. 1.はじめに
∗ キーワード説明
∗ 粉飾とは?
不正な会計処理を行い、嘘の財務諸表を報告すること
∗ 財テクとは?
財務テクノロジーの略。企業が本業以外の財務活動によって収
益拡大を狙うこと
∗ 時価会計とは?
資産と負債を再評価し、財務諸表に反映させる会計制度
∗ 損失飛ばしとは?
企業が保有する有価証券の損失計上を防ぐため、一時的に他
の決算期の異なる企業へ売却すること
3 2012/6/12
- 7. 2.オリンパス事件とは
∗ 過去の粉飾事件
企業名 時期 金額 問題の内容 詳細
西武鉄道 2004年11月 - 大株主虚偽 40年以上に渡り偽装
カネボウ 2005年5月 829億円 業績の粉飾 債務超過を隠ぺい
ライブドア 2006年3月 90億円 業績の粉飾 虚偽の経常利益
日興コーディアル 2007年3月 180億円 不適切な会計処理 決算数値を水増し
グループ
ビックカメラ 2009年3月 49億円 不適切な会計処理 不適切な特別損益
オリンパス 2000~10年 1,350億円 不適切な会計処理 損失飛ばし
億円
7 出所:週刊東洋経済
2012/6/12
- 8. 3.事件の全体像
∗ 事件の経緯
•円高による本 •銀行からの
業の苦戦 2000年 •時価会計の 借入の返済
1990年 •バブル崩壊 導入 2006年 が必要
~2005
代 による財テク •「損失飛ば ~ •大型買収を
での1,000億 年 し」の開始 利用して損
円弱の損失 失穴埋め
8 2012/6/12
- 9. 3.事件の全体像
∗ 時価会計のイメージ
このバナナ100円で 資産
買ったから帳簿上も 100
当然100円だろ?
あなた、今それを
スーパーで売ろうとし 資産
ても10円にしかなら 10
ないから、帳簿上も 損失 90
10円なのよ。
9 2012/6/12
- 10. 3.事件の全体像
∗ 事件の経緯
•円高による本 •銀行からの
業の苦戦 2000年 •時価会計の 借入の返済
1990年 •バブル崩壊 導入 2006年 が必要
~2005
代 による財テク •「損失飛ば ~ •大型買収を
での1,000億 年 し」の開始 利用して損
円弱の損失 失穴埋め
10 2012/6/12
- 11. 3.事件の全体像
∗ 損失飛ばしのイメージ
オリンパス 海外の
海外のファンド
オリンパスの預金など
有価証券 1,000億円 を担保にした借入
含み損
△600億円 売却 現金1,000億円
時価 400億円
11 2012/6/12
- 12. 3.事件の全体像
12 2012/6/12
出所:オリンパス株式会社 第三者委員会 調査報告書
- 13. 3.事件の全体像
∗ 事件の経緯
•円高による本 •銀行からの
業の苦戦 2000年 •時価会計の 借入の返済
1990年 •バブル崩壊 導入 2006年 が必要
~2005
代 による財テク •「損失飛ば ~ •大型買収を
での1,000億 年 し」の開始 利用して損
円弱の損失 失穴埋め
13 2012/6/12
- 15. 3.事件の全体像
15 2012/6/12
出所:オリンパス株式会社 第三者委員会 調査報告書
- 17. 4.事件の過程
Ⅰ 告白
2009年8月、事件はオリンパス社員(以下A氏)の告白から発覚する
「ウチの会社、バカなことやってるんだ・・・」
ホームページにも外部公表資料にも買収の形跡がない
「そりゃ、そうさ。発表してないんだからな。」
2年近くに渡るA氏からの情報収集と調査が始まる
17 2012/6/12
- 18. 4.事件の過程
Ⅱ 告発
2011年7月、満を持して雑誌「FACTA」に告発記事を掲載
しかし、アナリストや他のマスコミは一切反応しない
偶然、FACTAの記事の内容がウッドフォード氏の耳に入る
ウッドフォード氏も調査を始め、事件告発への動きが本格化
18 2012/6/12
- 20. 4.事件の過程
Ⅲ 追及
8月、ウッドフォード氏が菊川氏と森氏を追及する
菊川氏「部分的にはイエスだ」
森氏「菊川さんです。私は菊川さんに忠誠を尽くしています」
山口氏に別のオリンパス社員からの情報
9月、FACTAが告発記事第2弾を掲載
20 2012/6/12
- 21. 4.事件の過程
Ⅳ 解任
ウッドフォード氏のさらなる追及
9月30日、菊川氏はCEOの座をウッドフォード氏に譲る
ウッドフォード氏は菊川氏の完全退陣を求める
10月14日、臨時取締役会にてウッドフォード氏解任
21 2012/6/12
- 22. 4.事件の過程
Ⅴ 辞任
深層を伝えない日本のマスコミ
FTなどのスクープにより欧米諸国のトップニュースに
日本のマスコミもようやく深層解明に動き出す
10月26日、菊川氏が会長兼CEOを辞任
22 2012/6/12
- 23. 4.事件の過程
Ⅵ 調査
11月1日、第三者委員会が正式に発足
11月30日、ウッドフォード氏が取締役辞任を表明
12月6日、第三者委員会が調査報告を発表
23 2012/6/12
- 24. 4.事件の過程
Ⅵ 調査
∗ 第三者委員会の調査報告
透明性やガバナンスについての意識が低く、
正しいことでも異論を唱えれば外に出される組織
不正がウッドフォード氏の指摘があるまで発覚しなかった
取締役会は不正発覚後も調査を行うことなく、ウッドフォード氏を
解職し、チェック機能が果たせなかった
経営の中心部分が腐っており、その周辺部分も汚染され、
悪い意味でのサラリーマン根性の集大成ともいうべき状態
悪い意味でのサラリーマン根性の集大成ともいうべき状態
24 2012/6/12
- 25. 4.事件の過程
Ⅶ 対決
11月1日、第三者委員会が正式に発足
11月30日、ウッドフォード氏が取締役辞任を表明
12月6日、第三者委員会が調査報告を発表
12月7日、調査報告を受けて現経営陣の早期退陣を発表
ウッドフォード氏の復帰には難色を示し、プロキシーファイトへ
25 2012/6/12
- 26. 4.事件の過程
Ⅷ 撤退
ウッドフォード氏らの呼びかけを拒絶する
経営陣・メインバンク・大株主
オリンパスの利益にならない戦いに
ウッドフォード氏は撤退を検討
2012年1月5日、深夜まで続く関係者との議論
銀行を含む国内株主からの支援が得られないことへの確信
1月6日、プロキシーファイトからの撤退を表明
26 2012/6/12
- 29. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 内部告発の難しさ
∗ 内部通報の窓口が経営者となっている体制
∗ 信頼できない監督官庁
∗ 公益通報者保護法の矛盾
∗ マスコミに通報すると、窃盗・業務上横領・秘密保持契約違反の可能性
∗ 保護の対象は労働者のみ
∗ 「内部告発者の孤独は、誰も住み着くことのない孤島のようなもの」
(ウッドフォード氏)
29 2012/6/12
- 30. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 機能しないマスコミ
∗ 経営内容について疑惑がFACTAで報じられ、その直後に社長解任騒
動が起きていながら、それを深堀りしようとしない日本のメディアはや
はりニュースセンスがどこか麻痺している(山口氏)
∗ 恐ろしかったのは、オリンパスの疑惑をFACTAが報じた後も日本国内
の主要なメディアは何も報じようとしなかったことだ
∗ イギリスであればFACTAのような雑誌がスキャンダルを書き立てれば、
数時間後に金融ニュースのヘッドラインを飾り、株価に影響する
∗ 「私は日本のジャーナリズムへの疑念を捨てきれていない」
(ウッドフォード氏)
30 2012/6/12
- 31. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 馴れ合いの企業経営(内部要因)
∗ チェック不能の内部体制
∗ 「能力ではなく、菊川らの意向に沿って動くもの」が出世する組織
(現役オリンパス幹部)
∗ 「私は菊川さんに忠誠を尽くしています」
∗ 取締役会は、議題が根回しされた上で行われるただのルーティン
∗ 「反対意見が無く、お互いを褒め合い、同意し合うだけ。この環境こそ、
彼らが誤った経営判断を下した下地だった」
∗ 「良心ある個人が集団になるとどうして良心に反する行動をとるのか」
(ウッドフォード氏)
31 2012/6/12
- 34. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 不明確な上場廃止基準
企業名 時期 金額 問題の内容 結論
西武鉄道 2004年11月 - 大株主虚偽 上場廃止
カネボウ 2005年5月 829億円 「財界や政治家など権力者に
業績の粉飾 上場廃止
“必要な会社”と認定されれば
ライブドア 2006年3月 業績の粉飾
90億円 生き残り、気に入らなければ上場廃止
抹殺される。そんな証券市場
日興コーディアル 2007年3月 不適切な会計処理
180億円 には危なくて投資できない」上場維持
グループ (某ベンチャーキャピタリスト)
ビックカメラ 2009年3月 49億円 不適切な会計処理 上場維持
オリンパス 2000~10年 億円
1,350億円 不適切な会計処理 上場維持
34 2012/6/12
出所:週刊東洋経済
- 35. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 企業ともたれ合いの関係にある証券アナリスト
→企業が公募増資や社債発行に乗り出す際には、自社を引受
シンジケート団に入れてもらいたいという思惑
∗ カンパニー制の弊害
→他の事業部がどのような動きをしているか見えにくい体制
∗ 独立取締役の設置義務化
→独立取締役は義務化すべきか?また本当に機能するのか?
∗ 監査法人の責任
→監査法人が粉飾を見抜けないのは仕方ないのか?
35 2012/6/12
- 36. 5.事件が提起した日本の問題
∗ 日本人の問題
∗ 「日本人は名誉を重んじると言われながら、大抵の人は重大な場
面になるとどこかで腰が引けて無難な落とし所を探そうとする。欧
米人はそういう時には徹底的に戦う」(大手証券幹部社員)
∗ 「日本人と欧米人とで決定的に違うのは、『問題が生じてしまったと
きにどう対応するか』であり、『対応に当たって透明性を保ちつつ
断固とした姿勢で取り組むのか、問題を隠すことによって無難な着
地点を探すのか」である(山口氏)
∗ 「日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも極端に分か
れてしまうのか」(ウッドフォード氏)
「しかたない、それが日本だよ」(アメリカ人投資家)
∗ 「しかたない、それが日本だよ」
36 2012/6/12
- 37. 6.終わりに
∗ 粉飾を告発できるか?
∗ 山口義正氏の言葉
「もしもあなたがオリンパスに勤めていたとしたら、損失隠し
を羊のような従順さで助ける立場に回るのか、事なかれで
傍観するのか、危険を冒して内部告発に踏み切るのか」
∗ 経営共創基盤CEO・冨山和彦氏の言葉
「ガバナンスというのは結局、
だったら俺、社長代われるよ』
『だったら俺、社長代われるよ』
と言えるか。これだけ。」
37 2012/6/12
- 38. 6.終わりに
∗ 「お金を失うことは小なり。名誉を失うことは大なり。しかし、勇気
を失うことはすべてを失う。」(南 壮一郎氏の祖父)
∗ 「社会も企業も政治もボランティア活動も何もかも、人間が関わる
ことのできる部分は『個人』こそすべての価値の源泉なのである」
(山口 義正)
∗ 「企業は社会的組織であり、共通の目的に向けた活動を組織化
するための道具である 」(ピーター・F・ドラッガー)
∗ 「日本を変える方法は簡単です。目を逸らし、口をつぐむのでは
なく、勇気を持って立ち上がるのです。間違っていることは間違っ
ていると声を上げるのです。それだけのことで、日本の未来は拓
けるのです。」(マイケル・ウッドフォード)
38 2012/6/12